抗けいれん薬による熱性けいれんの再発予防について

(2014/11/02 最終更新)

 熱性けいれんは、乳幼児が熱を出した時にいっしょにおきるけいれんのことを言います。急に、手足が
強くこわばること(強直性けいれん)が多いのですが、 同時に目はあらぬ方に向いて、口からあわをふ
き、呼吸を止めてしまいます。次第に唇や顔の色が紫色にかわってきます(チアノーゼ)。それで終わる
こともありますが、その後、手と足をいっしょに、大きくピクン、ピクンと曲げる様子が見られることも
あります(間代性けいれん)。顔だけとか、手だけといった部 分的なけいれんではなく、体全体におき
る、はなばなしい全身性のけいれんです。こんなけいれんが、短くて30秒ほど、長いと2、3分、平均する
と1分前後続いたあと、力が抜けるように、けいれんがおさまっていきます。

 抗けいれん薬を積極的に投与して熱性けいれんを予防する方法があります。その有効性はかなり高い
ですが必ずしも100%確実ではなく、副作用などのマイナス面もあります。抗けいれん薬による薬物療法
を実施するかどうかは、熱性けいれん再発予防によるメリットとデメリットの両面を配慮し、また保護者
の意見を十分に尊重した上で決断する必要があります。

医学的なガイドラインでは、下記の方針が推奨されています。

1)自然放置が望ましい場合
 過去の熱性けいれんが2回以下で、かつすべての要注意因子てんかん発症、または熱性けいれん
再発に関する要注意因子、後述a、b 参照)が陰性の場合は、熱性けいれん再発に関しては無処置の
まま経過を観察することが望ましい。
2)発熱時ジアゼパム応急投与が望ましい場合後述参照):
 下記の適応3項目のいずれかに該当する場合は、発熱時速やかにジアゼパム投与を行うことが望まし
い。発熱時応急投与法によって、再発予防期間の熱性けいれん再発率は約1/3に低下する(2年間の再発
予防期間中の発作再発率は無投与、自然放置群38~45%に対して、応急投与群では12~14%と低い)。
しかも、熱性けいれんの再発例は、ほとんどが発作発現前にジアゼパムを投与されておらず、ジアゼパム
坐剤投与後に再発がみられるケースは総再発回数の7.5%に過ぎない。しばしば一過性に軽度の副作用
を認めるが、重大な副作用はない。
(1)15~20分以上遷延する発作が、過去に1回でもあった場合。
(2)要注意因子中、2項目またはそれ以上が重複陽性で、過去に2回以上経験している場合。
(3)短期間に発作が頻発する場合(例:半日で2回、半年で3回以上、1年で4回以上)。
3)抗けいれん薬連日持続内服療法が望ましい場合後述参照):
 下記の適応3項目のいずれかに該当する場合には、抗けいれん薬連日内服療法を推奨することが望まし
い。熱性けいれんの予防法としては、発熱時ジアゼパム応急投与法とほぼ同等に有効である。しかし、後
年の無熱性発作(てんかん発作を指す)の出現に対する予防効果は認められない。適切な薬物を適量単剤
で使用すれば、副作用は最小限に止まり、実質的に有害なことはむしろ稀であるが、医師の判断が必要で
ある。
(1)低熱性(37℃台)発作を2回またはそれ以上起こした場合。
(2)15~20分以上の遷延性熱性けいれんの既往があり、かつ発作発現前の発熱に気付かず、ジアゼパム
投与のタイミングを失する可能性がある場合。
(3)15~20分以上の遷延性熱性けいれんの既往があり、発熱時ジアゼパム応急投与に拘わらず、同じ遷
延性熱性けいれんを生じた場合。
4)推奨すべき処置法を特定せず、個々の判断に委ねたい場合
 前記1)~3)に明記した適応のいずれにも該当しない場合、どの処置法を選ぶかは各主治医・保護者の
判断に委ねて差し支えないと考える。

ガイドラインについての補稿
a.てんかん発症に関する要注意因子
(ア)熱性けいれん発症前の明らかな神経学的異常もしくは発達遅延
(イ)非定型発作(i:部分発作、ii:発作の持続が15~20分以上、iii:24時間以内の繰り返し、のいずれか
1つ以上)
(ウ)両親・同胞におけるてんかんの家族歴
 *7歳までにてんかんを発症する確率は、上記の因子がない場合(熱性けいれん患児全体の60%が該
当)で1%、1因子のみ陽性(34%)で2%、2~3因子陽性(6%)で10%である。
b.熱性けいれん再発に関する要注意因子
(ア)1歳未満の熱性けいれん発症
(イ)両親または片親の熱性けいれんの既往
 *いずれも熱性けいれんの再発率は約50%に達する
c.発熱時ジアゼパム応急投与
薬剤:第一選択はジアゼパム坐剤(ダイアップ坐剤4mg、6mg、10mgの3種)、またはジアゼパム経口
剤(セルシン、ホリゾンの散、錠、シロップ)。
用量:坐剤、経口剤ともに0.4~0.5mg/kg/回
用法
  1.主治医が患児ごとに用量を決め、調整したジアゼパム製剤を保護者に渡しておく。
  2.保護者は、37.5℃を超す発熱時に速やかに坐剤ないし経口剤のいずれかを投与する。初回投与後
8時間経過後もなお発熱が持続する時は、同量を追加投与してもよい。通常、2回投与で終了とする。状況
判断で、3回目投与を行ってもよいが、3回目は初回投与から24時間経過後とする。
副作用:しばしば一過性の軽度のふらつき、興奮、嗜眠などがみられるが、呼吸抑制などの重大な副作
用はない。
実施期間:通常2年間、もしくは、4~5歳までを目標とする。
⑥ジアゼパム使用が困難な場合(重症筋無力症、緑内障、ジアゼパムアレルギーなど)、抱水クロラール坐
剤(エスクレ坐剤、3歳未満250mg/回、3歳以上500mg/回)で代行してもよい。
d.抗けいれん薬連日持続内服療法
薬剤、用量、用法:フェノバルビタール(フェノバルビタール、フェノバール、末、散、エリキシル)、
3~5㎎/kg/日、分1~2、またはバルプロ酸ナトリウム(デパケン、バレリン、ハイセレニン、細粒、シロッ
プ)、20~30mg/kg/日、分2を連日経口投与。しかし、最初の2週間は上記の半量とし、3週目より上記量
とする。
血中濃度:3~6ヶ月ごとにモニターし、有効濃度の範囲内に保つ。
 フェノバルビタール  16~25μg/ml
 バルプロ酸ナトリウム 50~100μg/ml
副作用:フェノバルビタールでは、嗜眠、注意力散漫、多動など、バルプロ酸では、血小板減少、とくに
乳児では肝機能障害、高アンモニア血症、ライ様症候群など。
投与期間:熱性けいれん再発予防の目的には、1~2年間を目標とする。
e.解熱剤の使い方
 発熱時解熱剤投与による熱性けいれん再発予防効果は認められていない。ジアゼパム坐剤に解熱薬を
併用するときは、解熱薬を経口剤にするか、坐剤を用いる場合にはジアゼパム坐剤投与後少なくとも30分
以上間隔をあけることが望ましい。ジアゼパム坐剤に解熱薬坐剤を併用すると、ジアゼパムの初期の吸収
が阻害される可能性がある。